沿海区域は陸岸から20海里以内の水域のことや。図の水色の部分やな。1海里は1マイルとも言うけど、これは1852mのことや。だから、陸岸から20海里というのは、陸岸からおおよそ37キロ前後ということになるな。例えば、本州と沖縄を結ぶ船を作りたいというのであれば、平水区域の基準で船を作っても検査には合格しないんや。図をみて分かるとおり、最低でもこの沿海区域の技術基準を満たせるように作る必要があるということやな。
図の四角の経度・緯度で囲まれた範囲が近海区域や。近海区域になると一気に範囲が広がるな。具体的には東南アジア近辺まで行けてしまうことになるな。なお、日本の国内にあって、沿海区域を超える地域には行きたいんだが、この近海区域ほどの航行区域は必要ない、というニーズが一部あるんや。例えば、東京から南に約100kmほどの位置にある伊豆諸島の島々に行く場合などやな。この結果、「限定近海」という沿海と近海の間くらいを定めた概念も、日本の制度上は存在していて、「限定近海」という基準で建造されている船もあるんや。
最後に遠洋区域や。この遠洋区域というのは地球上のすべての水域のことを指すんや。近海区域を超える地域に行きたい場合や、地球上のあらゆるところに行きたい船を望むなら、この遠洋区域の基準で作らなければならないんや。これは最も厳しい技術基準や。例えば、世界各国を国際航海するクルーズ客船というのはこの基準で建造されているわけやな。
(コラム)どうやって実際の船の曲面形状部分の容積を算定するのか?
(コラム)船は「動産」なのに「不動産」?
船内に入ったら、船長さんをはじめとする船の士官クラスの船員の方々と会談して、船のもつ各種条約証書や、各船員が相応の海技資格をきちんと所持しているかの免状、船内設備の点検や整備の記録、船内で発生したごみや油の管理記録など、国際ルールで求められている書類や記録類を1つ1つ確認していくんや。国際航海をする船舶に求められてくる国際条約に基づく書類は膨大にあるから、この書類確認だけで、1時間以上かかることも往々にしてあるんや。
書類確認が終われば、船内巡回が始まるんや。ここからがPSCの本領となってくるな。写真は、船のブリッジで、海図や無線設備、その他必要な航海用具の備置き、今後の航海計画や、航海日誌等の記録類の確認を行っているんや。船内巡回では、基本的に目視と船員に対するインタビューをもって異常の有無を確認することとなるけど、外国人船員の方との会話は基本的に英語になるから、現場で場数を踏まないと得られない(逆にいえば向上心をもって、場数を踏んでいけば、ある程度見えてくる)PSCならではの経験の積み上げが求められてくるんや。英語での会話については、次のコラムも読んでみてくれな。
続いて外回りの備付設備の確認や。写真は、非常退船時に使用する救命艇やな。艇とその関係設備に問題がないかを確認しているんや。写真の、クレーンが付いた救命艇を船上に吊っている白いアームが救命艇のボートダビット(振出装置)やな。ダビット本体部分が、根本付近にあるガイドレールを斜め下方向にスライドして動き、その後ワイヤーを降ろして救命艇を海面に着水させるんや。船舶検査官の説明のところでも話したけど、こういった救命設備は、船が正常に運航している時には全く使わないので、平常時の維持管理体制がとくに重要になってくるんや。万が一の事態が発生したとき、これらが正常に作動するかしないかで、人命が助かるかどうかが大きく変わってくるからな。もちろん、これらを動かすための船員さんの普段からの訓練も大事や。設備はきっちり動くけど、扱い方を知らないのではやはりどうにもならんからな。
https://www.mlit.go.jp/saiyojoho/event/shipbuilding.html
https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr1_000098.html
このコーナーでは、現役の海事技術専門官であるワイが、学生の皆さんの進路相談や、一般の方から頂いた様々な質問について、これまでにないレベル(当局比)で、踏み込んでお答えするで。
https://www.mlit.go.jp/report/press/kaiji08_hh_000126.html
Q:そもそも鉄で出来た船が、どうやって水に浮かんでいるんですか?
Q:稼働中の船の側面に開いた穴から水が流れ出てるのをよく見るのですがあれはなんですか。
一般的な貨物船は、機関としてディーゼルエンジンを搭載しているんや。機関は複数搭載されていて、船の推進を担当する主機関1基と、各種船内電源を担当する発電機を駆動するための補助機関2基で構成される仕様が一般的や。ちなみに自動車の場合は、1つのエンジンでタイヤを回す動力を生み出し、かつ空調などの車内電源も賄ってるけど、船の場合は複数のエンジンを搭載し、それぞれが、「船を動かす役割」、「船内に電気を供給する役割」といった感じで、エンジンごとに役割を明確に分担しているんやな。
電気推進船の場合、電動機(モータ)がプロペラ軸と直結しているんや。機関がプロペラ軸と直結している一般的な仕様より、船内振動が大幅に低減されるため、船内の住環境は向上するで。ただ、見てわかるとおり、動力の伝達経路が複雑化するため、燃費やメンテナンス性の悪化など別の課題が生じることになるな。なお「発電機は動力を電力に変えるもの」「電動機(モータ)は電力を動力に変えるもの」、という真逆の関係であるとみると、動力伝達のイメージが分かりやすいと思うで。余談やが、電気推進といいながら、結局元をたどるとディーゼルエンジンの駆動がベースなんやな・・とワイはいつも思ってるんや。日本語って難しいな。
国内各地の離島航路で多数就航している「全没翼型水中翼船(ジェットフォイル)」は、航空機の船バージョンで、推進原理や整備方法も航空機と全く同じなんや。航空機は翼(よく)が本体左右にあるけど、水中翼船はその名のとおり、翼は水中(水面下)にあるんや。ガスタービンエンジンが生み出す動力で、ウォータージェット(WJ)推進器を駆動して後部ストラット中央から海水を吸い込み、それを船尾側ノズルから放出し、その反作用で前進するんや。その結果、水中翼は揚力を得て、船体が浮上する仕組みやな。船体の本体部分は海面から浮かび上がるので、波浪の影響を受けにくく、コンピュータによる自動姿勢制御により船体は安定して直立状態を保つことができるで。最大約45ノット(≒時速83km)の速度を出すことが可能で、フェリーでの移動と比べ移動時間は大幅に短縮され、船酔いしにくい快適な船の旅ができることから、我が国では30年以上前から国内各地の離島航路で就航している実績があるんやで。皆もぜひ機会があれば乗ってみてくれな。
Q:検子たんのヘルメット前面に書かれているJGってどういう意味ですか。
Q:検子たんが手に持っているハンマーはどのように使うものなんですか。